「アル・ハヤート」紙(2003年4月16日)

救出には遅すぎたアメリカの約束

略奪され焼失したイラクの遺産への世界的な憂慮


世界中の多くの要人や機関は、収蔵品が略奪に遭ったり破壊に遭ったりしたバグダッドのイラク国立博物館やイラク全土にある多くの遺跡に見られる歴史的な遺産の現状への深い憂慮を表明しました。

世界でも最古のものの1つと考えられ、人類共通の遺産でもあるイラクの遺跡・遺物の中でいま現在盗まれたり壊されたりしたものの数を正確に知ったり、無事に残ったものを保全することは困難な作業といわなくてはなりません。

遺跡・遺物だけでなく、国立図書館も略奪に遭い、また古文書や公文書を含む収蔵品の施設も放火に遭いました。
更に、国立現代美術館やサッダーム美術センターでも現代の絵画や彫刻品などへの略奪や破壊が目撃されました。
聖なるコーランの希少な古文書が収蔵されているワクフ図書館についてはどうなっているかと言えば、報道が殆どされていない状態にあります。

博物館の保護に関して(アメリカの)占領軍の不十分な対応への抗議の声が高まる中で、アメリカのパウエル国務長官はイラク国立博物館における略奪行為にたいする憂慮を表明し、
「アメリカはその責務を認識しており、あらゆる遺跡・遺物、なかでもこの博物館の収蔵品については、その保全にアメリカが主導的な役割を担うつもりである」、と語りました。

アメリカの各種の考古学組織ならびにユネスコによれば、彼らは今回の戦争が始まる数が月前にアメリカの責任ある立場の人々に会い、イラクの文明の遺産ならびに遺跡についての情報を伝えたと言うことです。

シカゴ大学のマグワイヤ・ギブスン教授―アメリカ国防省の責任者に幾度か面会したグループの一員だった―によれば、グループからその際に遺跡のリストやその他バグダッドの国立博物館を始めとして保護されなくてはならない場所のリストが国防省に手渡されたと言う。
「最初から私たちは彼らに対して略奪の起こることを警告していました。それに対して、彼らは遺跡・遺物が保全されるべきものだと話していました。しかし、現実は計り知れない損害が齎される事態となってしまいました」。
「バグダッドの博物館はカイロの博物館に比肩されます。と言うことは、喩えて言えば、カイロ博物館から70メートルの距離のところにアメリカ兵が立って監視している前で、人々がツタンカーメンの墓所から出土した宝物を持ち去ったり、ミイラをロバに引かせた荷車で運び去るようなものです」。のでしょうか。

コーラン関係の図書館が100フィートにも達する炎に包まれたのを目撃したとき、私は急ぎ(アメリカ)占領軍の事務所―海兵隊に属する民生局―に行きました。すると、そこで1人の将校が同僚に向かって叫びました。
「この者が宗教関係の図書館が燃えていると言ってるぜ」。
私は彼に対して直ぐに、地図の上で英語とアラビア語を使って火災の場所を示しました。更に私は煙の出ているところまでは、ここから3マイルの距離に過ぎないとも伝えました。車で行けば5分の距離です。しかし、半時間経っても、アメリカ兵は1人として現場で目撃することはありませんでした。その間に炎は更に高く上り、200フィートに達していました。